トヨタ社長 終身雇用の終焉の本心

40−50代のオチベーションに対する警告
昨今の記事でちょっとざわついた感のあるこのアキオ社長の言葉。この表面だけ捉えて”けしからん”と言ってはいけない深い理由があるような気がする。今、40代ー50代が抱える深刻なオチベーション。ここがトヨタ社長の言いたい本質ではないか?このタダですら斜陽産業である自動車業界で、次の世代を作り出すことができない、ただ給料が高いやつをそのまま雇っておくことは出来ない。変われないのであれば去ってもらわなければ会社が持たない。というのが、つまり終身雇用が難しいというのはホワイトカラーへの警告というのが本質であろうと感じてならない。なぜなら筆者自身がまさに、その年代でメーカーものづくりに従事している為、まるで自分のことを言われているような気がするのだ。
ビジネスとして儲かるか?が至上のものづくり
以前は、勤勉に作業をこなし、金がかかっても”いいもの”を作れば評価された時代だった。しかし基準化が整備され誰でも一定の性能を満たせるものが作れるようになった今、作業はどんどん、海外に流れて行き、日本人じゃなくても同等の設計ができるようになった。そして、今や自動車も電機も日本の産業はより一層の”ビジネス化”をしており、とにかく”収益”が筆頭に来ている。収益のためなら、お客様に見えない所は、どんどん手を抜く(ビジネス屋的には”設計の効率化”という)。ビジネスとしてはYESだろう。しかし、お客様の心に刺さるモノづくりという”心”の部分は、はっきり言って偽りと言いたくなる物づくり。
もちろん、ビジネスサイドも手を抜いて、原価を下げろとは一言も言ってないと言うだろう。品質をキープし効率化を進めてコストを下げて、浮いたお金で、新しい価値の投資に回す。それが設計・開発部隊のタスクである。
自分たちが夢見ていたモノづくりは遠のき、行末を見失うミドル層
しかし、そんな都合のいい話はない。実態は、もちろん本当に設計効率化できた分はちゃんとやっているが、それ以上にビジネスサイドのプレッシャーに負けて、無理して部品を削減のチャレンジをし(安全に関わる部品は絶対に手をつけない)、お客様の反発を覚悟しながら仕様を削減し浮かせたり、取引先に相談をし、価格を見直したりする。こうやっていかにも設計的に効率化させた風を醸成し、ビジネスサイドにご報告する。すると「ホラァ、やれば出るじゃん」とホクホク顔である。
収益あっての組織の存続。はい、そんな基本的なことは技術屋でもそこは理解できる。しかし過剰なまでのモノよりコストという全体の流れでどのようにモチベーションを保つのか、非常に悩ましい。ミドル世代が使えない、と言いたいだろうが技術には貪欲、ノウハウも豊富。しかし経営サイドとエンジニアのベクトルが反対に向いている。このギャップこそが停滞の根っこである気がしてならない。
とはいえ40−50代のミドルも変わる努力は必要。
話は戻って、現在の40−50代の若かりし頃はつまり、バブル期真っ只中。車といえば、デートには欠かせない存在。ソアラ、プレリュード、マーク II3兄弟、シーマ現象などのフレーズ。この辺りの名前を出せば丼3杯行ける世代だろう。これらのクルマは実際乗っていただけに私も丼3杯いける。
その世代が今、会社の経営の中心に移り始めてきているが、昔の想いに対して、現在の車づくりは激変した。作っている本人たちが戸惑いと諦めを覚える中で、どうやってモチベーションを保つのか。若かりし頃の思いは胸にしつつ、とはいえ時代も変わっていることを理解し、変わる努力もしなければならない。とミドル真っ只中の筆者はそう思っている。